宇宙医学の視点から自己組織化アプローチをみる

森谷新太郎

今回は、打って変わって宇宙医学という視点から自己組織化を振り返ってみたいと思います。

といっても、特別なことはなくこれまでに基礎コースでお伝えしてきたことを復習がてら振り返るということです。「そーだった、そーだった」と思って頂ければ幸いです(*^^*)

まず、私たちはのいる環境は地球という1Gという重力環境下です。対して、宇宙空間では重力がない0Gという環境です。月では約1/6G、火星では約1/3Gになります。この重力というものに暴露されているからこそ、私達は地球上で自己組織的に運動を振舞う事ができましたね。

この重力が私達の身体に何に影響をしているのかを宇宙医学の観点で確認してみます。

まず、「筋肉」について、
筋肉は脊柱起立筋やヒラメ筋などの抗重力筋が著しく萎縮します。宇宙空間の機体内部においては、ヒラメ筋のtypeⅠ線維である遅筋の萎縮が進みやすいそうです。ですが、宇宙飛行などと行った場合は、逆にtypeⅡ線維である速筋の萎縮が進むという報告もあります。このあたりは、まだ確定的な報告はなさそうですが、重力に暴露されていない状況での筋肉に対する影響は大きいのは当然ですね。

次には「骨」について、
骨は下肢を中心に脱灰(骨からミネラルが抜けていくこと)が起こります。逆に、肋骨や頭蓋骨などの身体を支える要素の少ない骨では骨密度が増加するという報告もあります。しかし、全体としては骨粗鬆症患者の18倍の進行速度になります。

次は、「脈管系」について、
循環血液量の低下と心筋の萎縮が起こります。これは、地球上では重力の影響によりどちらかというと下肢に血液がためりやすい状態にありますが、宇宙空間では重力の影響を受けないため血液はむしろ頭の方にシフトします。これによって顔面の浮腫みや鼻閉塞感が生じます。これについては、血管内の圧受容器を介した自律神経の調節機能の変化はないとされています。現在のところ、無重力環境下で血液が頭の方にシフトすることによって心肺領域にある受容器が液容量の増加と反応して尿量を増加させ血液量を低下させてしまうようです。また、全身、または頭部への血液の供給量も少なくなるため心筋も骨格筋同様に萎縮が起こると考えれています。

最後は「前庭器迷路」について、
宇宙空間では身体にかかる重力が0になるので、耳石器(重力加速度を検知)にかかる入力も0になります。三半規管については、その機能や反射系の調節力は減弱しないとされています。しかし、リンパ液の対流が減弱するので三半規管に対する影響も否定はできなと思われます。
宇宙空間では、その迷路機能の消失ないしは減弱により視覚情報とのミスマッチによって宇宙酔いを呈すると言われています。

これらの事からも自己組織化アプローチでは、むしろ積極的に重量(直線)加速度利用し、また動的に動く事で加速と減速を繰り返し回転加速度を入力する。つまり『揺れる』ということをとても大事にしています。患者さんは、あぶないから、転ぶからという心理からこれらの加速度を積極的に取り得れようとはしません。これは仕方のないことかもしれません。だからこそ、我々セラピストが安心と安全を保障しながら積極的に加速度を入力していく必要があります。
『揺れる』ということから、筋や骨の萎縮、心肺機能の低下、眩暈や平衡感覚の低下を防ぎ、痛みの軽減や運動機能改善などを提供してきたいですね。地球上での当たり前の感覚を外力として入力することが、自己組織的な良好な運動を生成して頂けるようにしていきましょう!

はい、今回はこんなところでおしまいにします(*^^*)

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